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お酒と肝臓について


過去10年前に比べ、ウイルス性肝炎、特にC型肝炎の治療は飛躍的に進歩しました。治せる時代になったのだから、すごい進歩です。糖尿病、代謝疾患の方を診療させていただく中で、何らかの原因から肝臓の数値が悪いという方はよくおられます。ALT(GPT)は肝細胞のダメージを示し、γGTPは肝臓の解毒に関わる酵素の数値です。ALTやγGTPの値に異常がある場合には原因究明が重要で、たいていの場合には腹部超音波検査あるいはCT検査で判ります。そして、種々の検査の結果、脂肪肝であることが判れば、その原因を探っていきます。判らなければ、肝臓専門医に相談です。

脂肪肝とは、文字通り肝臓に脂肪が多い状態です。アルコール性脂肪肝と非アルコール性脂肪肝に大別できますが、これらは単に肝臓にあぶらが多いだけではなく、肝炎、肝硬変、肝癌のリスクになります。肝臓は慢性疾患の場合、熱も痛みも出ませんが、線維化(肝硬変化)すると元に戻りません。「先生は今まで通院していたところの先生よりも肝臓の事やたら指摘するねえ。」と患者さんに言われる事もありますが、今まで実際に辛い思いをされた患者さんを何人も診療して来たという経験と、肝硬変や肝がんのリスクとなりうるという医学的データに基づいています。アルコール性脂肪肝の方が飲酒を継続すると、30~40%の方が肝線維症に至り、肝線維症の方が飲酒を継続すると10~30%の方が肝硬変になると言われています。アルコール性脂肪肝の方は、飲酒を続けてしまうと、最大で12%の確率で肝硬変に至るという事です。油断できません。


アルコール摂取量が長期に渡り(通常5年以上と言われています)、1日平均純エタノール60g以上ならアルコール性肝障害が起こり得ます。解毒の酵素が少ない場合や女性の場合は、もっと少ない40gでも起こり得ます。


アルコール性肝障害が疑わしい場合、禁酒後の血液データ(肝臓)を受けていただきたい調です。どうしても禁酒できないという方には、1日エタノール量を20gに減らし、再度血液データを受けていただきたい。数値改善がないなら、肝臓専門医に診て貰う事をおすすめしています。


<1日エタノール量20gにするには>

ビールは中びん1本なら、500ml

日本酒なら、1合(180ml)

ウイスキーなら、ダブル1杯(60ml)

焼酎なら、0.6合(110ml)

チューハイ(アルコール分5%)なら、500mL

チューハイのストロング系(10%~12%)なら、約250mL


お酒を適量で楽しみながら、少しでも薬を減らせたり、大病のリスクが下がりますよう、切に願っています。


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