診察中に患者さんから色々と質問をいただきますが、その中でも自律神経についての質問を結構多くいただきます。
生体(からだ)の機能は、生命活動になくてはならない機能(植物性機能)と、感覚や運動など生命には直接は関係しない機能(動物性機能)に大別されます。
上記の植物性機能には、体温の調節、循環、呼吸、消化器系(消化吸収)、腎臓の働き、ホルモンバランス、代謝バランスなどが含まれます。
この植物性機能に関与する神経をまとめて、自律神経と呼びます。
下に例えを記してみます。
「動物性機能」
あのリンゴが欲しい(意識が働く)→右手で取ろう→右腕の筋肉が動く→リンゴを取る
「植物性機能」
・飲み込んだ後のリンゴは、消化器系である食道や胃や腸が勝手に(意識とは関係なく自律して)動き、消化吸収されて便として肛門から排泄されます。
・リンゴを奪われて、怒りという感情が脳(中枢)で起こるとします。その感情の変化によって、自律神経を介して以下のような植物性機能の変化が生じます。
呼吸筋が刺激されて呼吸は速くなる。
心臓も刺激されて脈拍が速くなる。
腸の蠕動運動にはブレーキがかかる。
副腎はステロイドホルモンを多く分泌して血糖を上げるようになる。
闘争に備え、視覚情報をたくさん集めるために、瞳孔の筋肉に刺激が届き、瞳孔が開く。
などです。
そう、植物性機能の変化は、すべて無意識に生じます。こういった変化に関わる神経が、自律神経です。交感神経と副交感神経と呼ぶほうが、理解してもらいやすいかも知れません。
そして、上記のような変化は、甲状腺ホルモンのバランスに異常があっても見られます。
植物性機能および機能失調の例(いわゆる自律神経失調)
・問い詰められて、嘘をついて、精神的に動揺する→ストレスで、無意識に瞳孔の大きさが変化する(うそ発見器の原理)
・寝転がっている状態から急に立ち上がっても、健常ならば心臓や血管が立ち上がった事を感知して勝手に脳にちゃんと血液は届くけれど、自律神経機能に問題があると、脳にちゃんと血液が届かなくなる(起立性低血圧)
自律神経失調は、誰にでも起こり得ると思いますが、今まではじめてお会いした患者さんに「自律神経失調症です」と診断した事がありません。
自律神経失調を診断するには、器質的疾患(心疾患、胃腸疾患、泌尿器科疾患、脳・神経内科的疾患、内分泌疾患など)が無い事を確認する必要があり、さらに精神面の確認や評価を必要とする場合が多く、簡単ではないと考えてます。